こんにちは。
フィリピン・パングラオ島でフリーダイビング (素潜り)のトレーニング中の飯島です。
フリーダイビング の海洋競技は、”メンタルのスポーツ”だと言われます。
大会前日に自分が申告した深度まで潜り、そこに設置されたタグを取ってきて、『I’m OK』または『I am OK』とジャッジにはっきりと言う。
これが成功したらホワイトカード。
申告した深度に達せず、早めに浮上してしまったらペナルティ(イエローカード)。
プール競技であれば、プールを平行に潜るため、競技中に何かあったらいつでも浮上できます。しかし海洋競技はそうはいきません。
息を止めて深く潜っていく。そして、また水面に戻ってくる。
心も体もリラックスして、とにかく気持ちよく潜ること意識を集中する。水の中に溶けていく。
スポーツ競技の中で、こんなにリラックスして臨むものってなかなか無いのでは。”アドレナリン”とはかけ離れた世界です。
アジア各国でも人口が増えている、このスポーツ競技。しかし、まだまだマイナースポーツの1つ。どんな競技なのか認知は低いですし、メディアでは『息を止める危険なスポーツ』と取り上げられがち。
実際の雰囲気や選手の様子が伝わっていないのでは。と思っています。
今回、タイミングよく大会での選手サポートをお願いされたので、大会観戦を兼ねて参加してきました。
こちらの記事では、前回に続きフリーダイビング の海洋競技大会『Philippine Depth National Championship2019』の模様をお伝えします。
前回の記事はこちら↓
https://katoswimclub.jp/iijima-channel20190520/
いよいよ大会当日!!
前回の記事では、フリーダイビング の競技種目について簡単に説明、また大会前日の模様をお伝えしました。
大会前日の選手登録&競技説明、翌日の深度申告を終えた選手は、当日のスタートリストの発表を待ちます。ちなみに2日目の競技の申告は1日目に行います。
発表されたスタートリストを元に、競技順や自分の競技開始時間(オフィシャル・トップ(OT))を確認。ウォーミングアップの時間など、当日のスケジュールを組みます。
今回の競技会場は『Super Home』という、フリーダイビング のトレーニングセンター。
去年できたばかりの新しい場所なので、とにかく綺麗。
そのまま白い砂浜のビーチにつながってます。リゾートみたい。
ここで選手はチェックインを済ませ、控え場所で待機したり準備します。(チェックインはOTの1時間前まで)
実際に競技を行う場所は、もちろん海。ビーチから離れているので、ボートで沖へ移動します。
到着すると、いくつものブイ(浮き輪)が並んでいました。
1番手前のオレンジ色のブイが本番の競技で使うもの。
奥にある2つの黄色いブイはウォーミングアップ用。
オレンジと黄色の間にある4つの赤いブイは、ウォーミングアップが終わった選手が本番まで待機しているもの。
選手はブイを黄色→赤→オレンジと移動していきます。
ウォーミングアップは競技開始の45分前から可能で、それより前には入水できません。
競技開始直前の選手(白いスイムキャップ)
前の選手が競技を終えたら、本番用のブイに移動できます。
左の奥にいる2人はジャッジ(審判)。
それに加え3人のセーフティーが選手のサポートに入ります。
※セーフティー:安全管理をする人。選手に何かが起こった時に救助する。
OTの2分前からジャッジの1人がカウントダウンを始めます。
OTをむかえる直前までリラックスして競技を待ちます。選手によっては、リラックスするために水面で仰向けになって浮かんでいる人もいます。
「2分前、1分30秒前、1分前、30秒前、20秒前、10秒前、5秒前、4、3、2、1、オフィシャルトップ、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10…..20…..25…..30」
海洋競技の大会では、オフィシャルトップから30秒以内に潜り始めないと失格です。
こちらの写真は今回サポートさせて頂いた、アキさんの競技の模様です。
息を大きく吸い込んで、海の奥深くへ潜っていきます。この日の申告は-52m。あっと言う間に見えなくなります。
選手が潜り始め、申告したダイブタイム(潜っている時間)の半分になると、まずスクーターを持ったセーフティーが潜って選手のお迎えに行きます。潜る深度は、申告した深度の半分。
その後に、残る2人のセーフティーも潜って選手を迎えに行きます。この2人は-20mくらいまでしか潜らないので、フィンをつけて潜ります。
約2分後、セーフティーと一緒に浮上してきました。
水面に上がってきたら、すぐにリカバリーの呼吸。
ゴーグルとノーズクリップ(鼻栓)を外し、『I’m OK』とOKサインをジャッジにします。手前に居る黄色いTシャツの人がジャッジ。
ボトムにあるタグもしっかり取ってきて、余裕の笑顔。ジャッジからのホワイトカードを待ちます。
奥に居るジャッジが、ホワイトカードを出しました!
ダイブ成功!!
ジャッジも一緒に喜ぶ!
正式な競技結果は競技終了後に発表されます。
こちらが正式な競技結果(2日目)
潜っている間に違反行為が無かったか、水中に設置したカメラで確認し、正式な競技結果が発表されます。
赤く色付けされているのが”失格”(レッドカード)。
黄色が”ペナルティ”(イエローカード)。
緑は”国内新記録”(ナショナルレコード)。
何も色が無いのは、”ホワイトカード”または”欠場”です。
競技はだいたい朝の9時〜15時過ぎまで。途中でお昼休憩を1時間ほど挟みます。
セーフティーやジャッジは午前と午後の2チームで回します。
手前に居るのは競技が終わって笑顔のアキさん。奥に居るのは午前のジャッジ&セーフティーの方々。ずっと海に入っているので、ヘトヘト(笑)
クロージングパーティー
2日間にわたる競技が終わったら、夜はクロージングパーティー。
出場した選手やスタッフ、応援に来た人。みんなで「お疲れ!」と労い合います。
ここで各種目の順位や総合の競技結果などが発表され、表彰式があります。
海外選手も多数出場していますが、この大会はフィリピン選手権。なので、フィリピン人のカテゴリーで順位も発表されます。
1位の選手にはフィンなどの豪華賞品が贈られました。うらやましい…。
サポートさせて頂いたアキさんと。出場した2種目ともにホワイトカード。
そのうち1種目は女子1位になりました!
今回、観客としてナショナルレコードや-100m以上潜る選手の姿を見たり、
出場する選手のサポートという形で、競技を間近で見ることができました。
緊張感の中で、リラックスしながら記録へと挑む選手たち。
そして競技が終わったら、お互いのダイブを称え合う。
緊張感と、ほどよい”ゆるさ”が同居する独特の雰囲気が漂う大会。ますます不思議なスポーツだなと興味が湧きました。
そして、なんだかインスパイアされて、わたしも大会に出場したくなってきました。
日本国内ではあまり開催されない海洋競技大会。トレーニングして、いつか海外の大会に出れるといいな。